新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

4.何を意識させたら気がきくようになるのか


気がきく人は、「感情をコントロールし、思考をプラスに切り替える」ことが上手ですが、どのようなことを意識させると気がきくようになるのでしょうか。その有効な方法の一つとして、「仕事の定義」について考えさせることをお勧めいたします。私たちは日々お客様に商品を通じて価値を提供するために仕事をしています。そして仕事には、一人ひとりの生き方や考え方が出ます。

人は自分が定義づけた通りの仕事をしています。ただし同じ仕事であっても、人によってその定義の仕方は異なります。自分の仕事をどのように定義づけるかで、仕事への取り組み方、提供する価値が大きく変わります。

仕事の定義は自分で決めることができます。もし今の仕事にやりがいが持てていなければ、やりがいのある仕事の定義を考えさせてみましょう。

■仕事の定義が仕事の質を決める

タクシーの運転手の事例を参考にして「仕事の定義」について考えてみましょう。皆さんはタクシーを利用したときに、運転手の応対の善し悪しに差があると感じませんか?その対応によって気分をよくしたり、反対に気分を害したりします。

そこで仕事の定義について、タクシーの運転手を例にとって考えてみます。タクシーに乗って行先を伝えると無表情・無言で発進する、返事をしない、降りるときにお礼も言わない不愛想な運転手がいます。

その反対に、「ご乗車ありがとうございます」とさわやかな挨拶をし、行先を伝えると「はい、かしこまりました」と笑顔で応えてくれる運転手もいます。お客様の様子を見ながら、退屈そうだと察するとさりげなく話しかけてくれます。そっとしてほしいオーラを放っているお客様には、静かな空間を提供します。降りるときは笑顔で目を合わせて、「ありがとうございます。お忘れ物のございませんように。お気をつけていってらっしゃいませ」と、一言言葉を添えて送り出してくれます。

これらの応対の違いが何によるものかと考えたとき、それは運転手の仕事の定義の仕方に本質的な原因があると思うのです。前者の運転手は、きっと「お客様を安全に目的地にお送りする」ことが自分の仕事だと考えているのでしょう。そこには感じよくお客様に接して、快適さを提供しようという意識はありません。そもそもお客様を「快適に送り届ける」ことが自分の仕事だという認識がないから、それが応対の仕方に出ているのでしょう。

一方、後者の運転手は、「お客様を安全に快適に目的地にお連れし、その後も穏やかな気持ちで過ごしていただく」ことを考えながらお客様と接しているのだろうと推察できます。

そのためには、運転手自身が感情をコントロールして楽しく仕事に向き合い、お客様に乗車時間を快適に過ごしていただこうという意識が働きます。それが快適に過ごしていただく工夫につながり、気がきく行動に近づいていきます。

■気がきく事務職は何を意識して仕事をしているのか?

もうひとつ事例を挙げます。事務職の仕事であれば、気がきく人はどのような定義を考えるでしょうか?毎日、決められたことを決められたとおりにすることは大切です。しかし、ルーティンワークをこなすだけの人は、笑顔も出ないし、創意工夫もできないでしょう。

「事務の仕事を通して周りの役に立ち、生産性を上げてお客様や働く仲間に貢献し関わる人を幸せにする」ことが自分の仕事として取り組んでいる人は、笑顔が出て、どんどん仕事の質も高まっていくでしょう。

■やりがいや誇りが持てる「仕事の定義」を研修で教える

仕事は人を幸せにするためにするのです。人の役に立つことでやりがいや誇りを感じる仕事の定義にすることが重要です。そのために、「どのようにすれば周りの役に立てるのか」「どのようなことを期待されているのか」「期待に応えるために何ができるのか」「誇りを持って取り組むために何が必要なのか」…このようなことも含めて、新入社員や若手の方にはしっかり考えることが大切であると教えてあげてください。

自分の仕事を明確に定義づけることができたら、おのずと気がきく発想や行動につながっていくはずです。

仕事の知識やスキル、テクニックを教える前に、こうした考え方や取り組む姿勢を教えることが、いかに大切かがおわかりいただけたと思います。人材育成においては、その土台となるところをしっかり根づかせることで、気がきく社員を育てることができるのです。


>>新入社員研修プログラムはこちら