新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

7.来客応対研修で教えておきたい気がきく5つのポイント


新入社員は早く一人前になりたいと思って、マナーや仕事を早く覚えようと努力します。
3か月ほど経てば無難にこなせるようになります。
しかし、要領がわかり、ほめられなくなったときに陥りがちなことが、気持ちのこもらない応対になることです。そうすると毎日同じことを繰り返してマンネリ化し、だんだんと事務的な応対になっていきます。

なぜこのようなマンネリが起こるのでしょうか?また、このマンネリを克服するために何が必要なのでしょうか?マンネリを乗り越えて、気がきく応対ができるようになるためにはどのような教育が必要なのかを考えていきます。

■マンネリを克服するために何が必要か?

マンネリに潜んでいるのは、そもそも「何のためにするのか」という目的を忘れて、手段が目的とすり替わってしまうことが大きな要因です。

つねに物事の本質や目的を見失わないように、そこに立ち返らせる指導が重要なことはいうまでもありません。さらに、お客様一人ひとりに合わせた心のこもった来客応対ができるように、日々反省と創意工夫を重ねることの大切さを教えていく必要があります。

■来客応対の気がきくポイント1 おもてなしの心が伝わる迎え方のコツは?

あなたの会社の事務スタッフは、どのお客様に対してもありきたりの言葉で迎えていませんか。条件反射的に出てくる「いらっしゃいませ」「いつもお世話になっております」などの定型の挨拶だけでは、お客様に「ウエルカム」の気持ちは伝わりません。お迎えで一番大切なことは、「〇〇様、お暑い中ようこそいらっしゃってくださり、ありがとうございます」という、個客対応とおもてなしや感謝の気持ちを伝えることです。

そのためには、接遇応対力だけでなくお迎えの仕組みも必要です。来客アポイントリスト(※)を仕組化して、来客情報の一元化を図ることも応対力の精度を上げるために大切です。面談当事者は、前日までにリストに必要事項を入力しておきます。

(※)日時、お客様の会社名・名前、面談者の部署・名前、訪問目的、面会場所、個客情報

来客応対をする社員はこのリストを活用することで、お客様を名前でお呼びしたり、個客情報から気のきいた一言を沿えることで気持ちがこもりやすくなります

「〇〇様、本日はご遠方からわざわざお越しいただきまして、誠にありがとうございます」
「〇〇様、本日はお足元の悪い中、ようこそお越しくださいました。よろしければこちらのタオルをお使いくださいませ(白いタオルを準備しておく)」
「〇〇様、こんにちは。お待ち申し上げておりました。先日は△△の件では、お力添えをいただきまして、ありがとうございました」

業務は効率化しても、気持ちや心までを効率化してはいけません。個客視点を見失うことなく、応対力の強化と付加価値の高め方について気づかせ教えることが大切です。

■来客応対の気がきくポイント2 取次ぎでお客様から預かった名刺の扱いは?

お客様が来訪時に出された名刺を預かりますが、その後お客様にお返しすることを教えておきます。ただし、このときお客様と担当者の間をつなぐ上手な橋渡し役ができることがポイントです。

「お名刺ありがとうございました」とお返しするだけではなく、「〇〇様、お名刺どうもありがとうございます。△△が、久しぶりにお目にかかるのでとても楽しみだと申しております」などと言葉を沿えると、良好な人間関係づくりの橋渡しにつながります。

■来客応対の気がきくポイント3 応接室へのご案内の本質的な目的を理解させているか?

ご案内の目的は、応接室へご案内することだけではありません。案内者はさりげなくお客様との間に会話の糸口をつくり、お客様がリラックスできるように気を配ることも、その大切な目的であることを教えておきましょう。

案内時の自然な会話ネタとしては、お天気の話題が長くならず一般的です。ただし、「今日は、雲一つないいい天気ですね」と話しかけても、「そうですね」と一言で終わり、会話が途絶えることも考えられます。そこで、その後に続くもう一言は用意しておきます。「昼からは益々気温が上がって、夏日が更新されそうですね」と伝えると、とても自然な会話になります。

また、お天気の話題の後に、関連した話題を質問形式で広げてみましょう。
「今日は予報では晴れと言っていましたが、この様子では一雨きそうですね」
⇒「〇〇様は傘をお持ちになっていますか?お持ちでなければ傘の準備がございますので、ご遠慮なくご利用くださいませ」

■来客応対の気がきくポイント4  商談をプラスに導くお茶接待とは?

お客様を大切にする気持ちは、おもてなしの心として、おのずとお茶接待の仕方にも表われます。お茶接待の目的は、会社のイメージアップや商談をプラスに導き、お客様との信頼関係につなげることです。

そのためには、お客様のことをよく知り、好みや思考についての情報はデータベース化(※)して部内で共有します。毎回お客様の反応をよく観察し、データに蓄積して次に活かしていきます。

(※)お湯の温度、お茶の濃さの好み、苦手な飲み物、コーヒーのミルク・砂糖の好み等
たとえば、コーヒーにミルク・砂糖を入れずに召し上がるお客様には、カップの柄は右側にセットしてお出しします。甘党のお客様には、スティックシュガーを2本添えることができます。また、暑い日にお越しになったお客様には、「〇〇様、担当の△△がこちらに参りますまでに、どうぞ冷たいお絞りとお茶で一息お入れくださいませ」と、汗が引きやすいような配慮をします。担当者入室時には、再度お茶をお持ちして差し替えるとよいでしょう。

■来客応対の気がきくポイント5  感謝の気持ちが伝わるお見送りとは?

お客様のお見送りの仕方で来客応対の最後の印象が決まります。このシーンが丁寧で好印象であるほど、よいイメージとしてお客様の余韻に残ります。お見送りは直接の応対者だけでなく、周りにいる人も気づいたときには会釈やお礼を述べて、会社全体で感謝の気持ちを伝えることが大切です。

上司がエレベーター前で見送る場合は、部下は気をきかせて、「1階までご一緒させていただきます」と、お客様と一緒にエレベーターに乗り込み、玄関までお見送りをします。

来客応対研修では、やり方や形を教えるだけでなく、その本質や目的を考えさせて腹落ちさせることが重要です。そしてもっと大切なことは、上司や先輩がその本質を理解して、自ら実践していることです。社内に顧客志向の風土を根づかせて、おもてなしの心が伝わる来客応対を目指しましょう。


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