新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

10.できる上司ほどパワハラに気を付けて指導をする


パワハラが職場の問題になって20年以上経ちますが、今なお管理職研修にパワハラの内容を入れてくださいとのご依頼が増えています。今やどこの会社にもいる「パワハラ上司」や「クラッシャー上司(※)」。

(※)クラッシャー上司:気分の浮き沈みが激しく、部下のミスを執拗に責め、あるいは暴言を吐いたりして次々に部下を鬱と休職や退職に追い込むなど、その言動で部下を次々と潰してしまう上司のことを指す(出典:ウキぺディア)

上司が部下をいじめることは悪質ですが、仕事のできる上司が教育と思ってやった部下指導が、結果的に行き過ぎてパワハラになってしまうことがあります。できる上司ほどパワハラに陥る危険性があります。

上司が時代錯誤な部下指導を起こさない教育や風土づくりについて考えてみましょう。

■できる上司がパワハラ上司・クラッシャー上司になる

上司が部下を嫌っていじめるパワハラやリストラ目的に部下に退職に追い込むパワハラは、上司や経営者の個人的な問題です。それよりも上司が厳しく指導するあまり、部下に強烈なプレッシャーやストレスを与えて、部下が鬱になったり、部下を潰したり、自殺に追い込んだりするケースは、マネジメントや社員教育の問題です。

一般的にクラッシャー上司は、厳しい指導教育は会社のため、本人のためと思って悪気なく行っています。部下が精神的・肉体的に病んでいることに全く気がついていません。

また、クラッシャー上司は能力が高く、モーレツ社員として業績を上げてきた人です。そのため自身の成功体験ややり方、価値観が正しいと思い込み、部下に押しつけて、その通りにやらせようとします。部下の意見を聴かず、価値観や気持ちも理解せずに、自分と同じ型にはめようとすることが問題なのです。まさにクラッシャー上司のコミュニケーションスタイルは、軍隊組織に見られた一方的な指示命令のトップダウンスタイルです。

■上司のコミュニケーションの在り方が180度変わった!

今や経済が成長経済から成熟経済に移行し、変化が激しく、ますます先の読みにくい時代になりました。人の価値観も多様化、高度化するなかで、企業が存続していくためには、より顧客ニーズに合った対応を迅速にしていく必要があります。さらに、顧客の一番近くにいる現場スタッフや実務担当者の情報や多彩な能力、価値観、発想を活かすことが必要になってきます。

そこで組織のコミュニケーションスタイルは、トップダウンからボトムアップという逆の流れが求められます。指示命令ではなく、自ら考え行動する自立型社員を育成し、上司は社員や現場をサポートしなければなりません。 こうしたことへの理解を促すマネジメント教育が必要です。上司の指導部下を委縮させたり、思い通りに動かそうとしていないか、さらにパワーハラスメントに当たっていないかを、定期的にチェックしたり、またはチームで確認し、意識づけていくことが必要であると考えます。

■厳しく鍛えること、叱ることが教育という考え方や風土が職場にありませんか?

  • (1)部下のレベルではなく上司のレベルで考えてしまい、部下に対する期待値が高くなりすぎている
  • (2)部下のミスやできていないところばかりに目が向いてしまう
  • (3)プロセスや取り組み姿勢は見ないで、結果だけで評価している
  • (4)部下の長所を伸ばすことより、欠点を直す指導に陥っている
  • (5)「仕事は見て覚えろ」「見て盗め」「空気を読め」と言っている
  • (6)感情がエスカレートして、「辞めろ」などの暴言を吐くときがある
  • (7)あまりにも高い目標やむつかしい仕事を与えることがある

これら7つの指導法に当てはまるころがあれば、現在の部下指導を見直す必要がありそうです。叱って育てるよりも、ほめて長所を伸ばす教育が主流です。長所が伸びると自然に欠点が消えていきます。

叱る指導を「北風と太陽」の寓話に照らし合わせてみるとよく分かります。北風が旅人の衣服を吹き飛ばすのは、叱ることで強引に人を動かそうとする行為です。反対に、太陽のようにポカポカと優しく照らすと、自分の意志で人を動かそうとする行為です。 よって相手の気持ちを考えて、主体的に動くように働きかける内発的動機が有効です。

■上司が機嫌悪いオーラ(感情)を出していませんか?

部下がミスをしたとき、部下から悪い報告を受けたときに、誰しもついカッとなることがあります。イライラすることで機嫌悪いオーラ(感情)が出てしまうと、部下は委縮して何も言えなくなってしまいます。

上司がイライラすることで、部下との人間関係が悪化し、職場の雰囲気が凍りつきます。このように上司の感情は職場風土に大きな影響を及ぼします。上に立つ人ほど苛ちな人が多く、上手な感情コントロールをすることが求められます。怒りなどのネガティブな感情をコントロールするための方法として「アンガーマネジメント」研修を取り入れてもよいでしょう。

■上司から積極的に若手社員とコミュニケーションを図っていますか?

若い人には上司から歩み寄ってコミュニケーションを図り、価値観や考え方、育った 環境を知る努力が必要です。上司の価値観や考え方、やり方を一方的に押し付けずに、部下の気持ちを分かる、理解するように働きかけましょう。

パワハラ上司・クラッシャー上司をつくらない職場風土を構築するためにも、部下との関わり方や指導の在り方について再確認してみてください。


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