新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

11.挨拶をしない職場をどのように教育で変えるのか?


あなたの職場では明るい挨拶が交わされていますか?私は講師として、毎日多く会社を訪問します。挨拶の良し悪しで会社の業績や社員の仕事ぶりまでわかるものです。明るく爽やかに全員が挨拶してくれる会社とこちらが挨拶しても軽く頭を下げる程度の挨拶しかしない会社があります。

なぜ挨拶が会社の業績や社員の仕事に影響するのかを検証しながら、どのように教育したら挨拶ができるいい会社になるのかをみてみましょう。

■良い習慣を実践する風土の上に社員の成果や会社の業績が成り立つ

職場での挨拶をはじめとする社員一人ひとりの意識(考え方や取り組み姿勢)や行動が職場風土をつくります。挨拶をするかしないかも職場の習慣ですから、その会社の風土そのものといえます。

強い組織、伸びている会社ほど良い習慣を長く継続しています。そして一流といわれる会社ほど、一人として例外なく当たり前を徹底する努力を重ねています。会社が大切にする価値観を社員も理解して大切にすることで、組織力が高まります。さらにチームで成果を上げるためには、円滑な人間関係を築くコミュニケーションは必須です。

そのコミュニケーションの第一歩が挨拶です。挨拶は社会人として当たり前の行為ではあるにもかかわらず、職場挨拶の風土が根づいていなかったり、効率を優先するあまり挨拶やちょっとした会話まで無駄として禁止する職場まで存在しています。

挨拶があるからこそ、互いに一言かけて、感謝の言葉が行きかい、会話の量を増やすことができます。結果、風通しのよい風土によって、スピーディで気がきく「報・連・相」が生まれ、連携・支援体制で業績向上に直結するのです。

「たかが挨拶、されど挨拶」といわれるゆえんはこんなところにあるのです。だからこそ、どの職場でも明るい挨拶が根づけば、皆が働きやすい明るい職場へと変化していきます。

■なぜ「挨拶」に取り組むのか、本質を周知徹底しよう!

挨拶は人から強要されて行っても何の意味もありません。挨拶の必要性を感じて、各人が主体的に取り組まなければ、職場に根づいていかないのは言うまでもありません。そこでまず、挨拶への取り組みの本質を職場に徹底的に伝えることから始めていただきたいのです。

挨拶をすることが目的ではありません。今以上に、明るく元気で働きやすい職場風土づくりをするための手段のひとつが挨拶だという認識が必要です。その取り組みのメリットとして、皆が働きやすくなります。働きやすい職場は、業績向上に繋がり、企業のイメージアップやお客様の信用、満足度にも大きく及びます。

■トップが挨拶に本気で取り組めば、職場が変わる

挨拶をする本質を理解して実践するためには、まずトップがその取り組み宣言を発信し、トップから率先して挨拶をすることが大切です。

こうした取り組みは、どうしても打ち上げ花火的になりがちです。最初は勢いがあっても、継続できずいつの間にか立ち消えてしまうため、社員側も「またいつものことで、かけ声だけで終わってしまうだろう」と、本気で取り組みません。結果、尻すぼみで終わってしまうケースを数多く見てきました。

したがって、社員はもちろんですが、トップや役員、管理職がより本気で積極的に取り組むことが重要です。

ある会社で職場活性化を図るために、まず挨拶を定着させようと取り組んだときのことです。上司の方には以下のことを実践していただきました。まず朝の出勤時間には必ず手を止めて、部下の目を見て名前を呼んで挨拶をしていただくこと。上司の方からは、「いちいち手を止めていたら、仕事にならない」という意見も挙がりましたが、目的達成のためにも、必ず実践することをお願いしました。

3か月後の研修時に職場の変化についてお聞きすると、「社員同士のコミュニケーションがよくなって、職場の風通しがよくなった。「報・連・相」の情報量も増えて連携・協力体制が取りやすくなった。挨拶ひとつで職場の雰囲気って変わるんですね」というご意見をいただきました。その成果が職場の習慣になって、企業風土として定着するまで継続していくことが大切です。

■挨拶から思いやりや感謝の言葉が生まれ、強い組織のバロメーターになる

明るい挨拶は、職場を活気づけます。社内で行う挨拶の質が、そのまま外部の方に対しての挨拶にも直結するものです。社員の笑顔や声のトーンを通じて、心のこもった挨拶としてお客様の心に残ります。過日、私が研修で伺った会社でも、社員同士の思いやりやお客様に対するおもてなしが一人ひとりの挨拶に表れていて、職場が活性化します。よい企業風土づくりの重要性を改めて実感しました。

挨拶は現象面で見えるものですが、その根底にあるのは思いやりや助け合いの精神です。一緒に朝の「おはようございます」という挨拶はたった一言ですが、その後には、言葉に出しては言いませんが「今日もよろしくお願いいたします。一緒に協力体制で頑張りましょう」といった言葉が隠れています。

このような気持ちがあるからこそ、一言の挨拶がきっかけになって次の一言を生み出します。「お疲れ様」「大丈夫?」「手伝うよ」「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」「暑かったでしょう」「寒かったでしょう」等々の声かけが自然に出てくるようになり、「ありがとう」という感謝の言葉も多く飛び交います。

「ありがとう」の多い職場は、チームワークの良さを量るバロメーターで、組織力を高める「報・連・相」は、こうした土壌のうえに成り立っています。

■挨拶は周りに関心を持つことから始まる

挨拶や声かけは、周りに関心を持つからこそできることです。挨拶のない職場は、往々にして周りへの興味・関心が薄いため、協力・支援・連携に対する意識が働かないのです。職場では互いに相手を知るための仕掛けづくりが必要です。

会議では、最初の5分は互いの近況を話してから本題に入る。互いの興味や価値観を知るための時間を設けるなど、ちょっとした工夫をちりばめていくのです。最初は挨拶をしても相手から挨拶が返ってこなくても、見返りを求めることなく、相手の名前を呼んで根気よく続けましょう。

会社全体での取り組みが難しいようであれば、まずはあなたの職場から変えていきませんか。賛同者を巻き込みながら、その輪を少しずつ広げて組織全体の風土づくりに繋げる取り組みにより、職場の風土は少しずつ変わっていきます。


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