増谷淳子が日常の体験から感じること

1.雨の日のタクシー


■雨降りに利用するタクシー

雨降りに仕事に出かけるとき、私は最寄り駅まで(ワンメーター)タクシーを利用します。理由はセミナー研修で登壇するときに、ヘアスタイル、パンツの折り目、靴等できる限り身だしなみを良好な状態に保つためです。自宅前で流れているタクシーを止めます。雨の日、タクシー、ワンメーター、この条件で繰り返し利用していると、運転手さんによって対応が大きく違うことに気づきます。

■同じ状況でも運転手さんによって対応が大きく変わる

ある日の運転手さん。「〇駅までお願いします」と行先を伝えると無言のままで発車。駅手前の交差点まで来たところで、信号が赤に変わります。信号を左折して3メーター先が地下鉄の降り口。私のタクシーは前から3台目。運転手さんはくるっと後ろを振り向くと、「お客さん、ここでいいですか」と。きっと赤信号で待つより、降りて歩いたほうが速い…ということなのでしょう。降りるときも無言。私は地下鉄の降り口を小走りで目指します。短い距離でも横からの強い雨に足元は一気に濡れます。「あー、左折してくださいと言えばよかったな」と足元を拭いながら悲しい気持ちで独り言。

それから1週間、再び雨です。この日の運転手さんは、乗り込むと「おはようございます。ご乗車ありがとうございます」と振り向いて笑顔で挨拶。感じがいいなと思いながら私も挨拶をして行先を伝えると、「わかりました。今日も一日雨のようですね」とさりげなく言葉を添える運転手さん。

この日も運悪く駅手前の交差点で信号が赤に。すると先日と同様に、この運転手さんもくるっと振り向いて、「ここでいいですか」と言うのだと思っていました。しかし、その予想は大きく外れました。運転手さんの口から出た言葉は、「お客さん、お時間はありますか」だったのです。「ええ、時間はあります」と言うと「では、地下鉄の降り口ギリギリのところまで行きますので、そのまま乗っていてくださいね。料金は変わりませんから」

そして料金を支払って降りるときにさらにこんな一言、「お客さん、お足元、水溜りは大丈夫ですか」。何と、降りるときの私の足元まで気遣ってくださるこの気配りに感動。「大丈夫です。ご親切にありがとうございます」と言って車を降りると、笑顔で「どうぞお気をつけていってらっしゃい」と、本当に心温まる言葉を残して走り去っていきました。

■「自分本位」か「相手本位」か 仕事にはその人の考え方が表れる

タクシーで降りる足元まで気遣ってもらったのは生まれて初めての経験。こんな運転手さんがいるんだと、想定外の対応に感心、感動でした。お陰様で、雨の日なのに心ウキウキ、幸せ気分で、今日も1日頑張るぞとテンションアップ。

同じ仕事をするなら、この運転手さんのように相手が幸せな気持ちになれるような関わり方をしたいものですね。

この二人の運転手さんは、何が違うのでしょうか。
前者の運転手さんは、自分本位の仕事スタイルです。仕事を楽しむというより義務感のほうが強いのではないかと推測できます。それに比べて後者の運転手さんは、相手本位の仕事スタイルで、自分も仕事を楽しんでいるようです。お客様に車内で快適に過ごしてほしい、車を降りた後も幸せ気分でいてほしいという想いを持って取り組まれているのではないでしょうか。

仕事にはその人の生き方や考え方が表れます。取り組む姿勢によって、仕事の楽しさ、質、貢献度は大きく変わり、この姿勢は相手にも伝わります。日々相手の喜びをつくれる人間でありたいと思います。


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