新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

3.どのような人が、気がきく社員になるのか


あなたは気がきく人と気がきかない人の違いを考えたことはありますか?
私は「気がきく社員の仕事術」というセミナー講師をしていますので、大変関心を持っています。

最近は気がきく人が減ってきています。その理由はいろいろあるものの、時代や社会の変化が大きな要因といえます。科学技術が発展し、世の中が「便利」に「効率化」されるなかで、学校の勉強は暗記が中心で、テストもマークシート形式です。遊びはゲーム会社がつくったゲーム、わからないことがあればインターネットに答えを求めて、考えなくてもやっていける世の中になりました。

また、コミュニケーションも携帯電話、電子メール、SNSなど、フェイスtoフェイスのコミュニケーションが少なくなることで、人間関係も希薄になりました。経済も低成長になり、少子高齢化の影響で先行きが明るくないため、多くの人が幸せを感じにくくなっているようです。

■気がきく人とはどんな人でしょうか?

あなたも誰かを「気がきかない」と思ったことはありませんか?
また、誰かから「もっと気をきかせて」と言われたことはありませんか?

「気がきく人」は一言でいうと「心に余裕がある人」、「相手の立場に立てる人」、「周りの空気を読める人」です。結論から申し上げますと、気がきく人は、感情を上手にコントロールし、思考をプラスに切り替えることが上手です。

今の世の中はストレス社会です。学校でも会社でも家庭でも、特に仕事においては、思い通りに行かないことばかりです。不満や不安、焦り、怒り、悲しみ、落胆等により、多くの人がストレスをかかえて、自分本位な考え方になりがちです。

だからこそ感情をコントロールして、平常心を保つことが必要です。周りをよく観察して気を配り、当たり前のことや今あることにも感謝して、気分よく笑顔で他者と接することが求められます。そうすることで、人の役に立つ、喜ばれることを自分のエネルギーに変えて、成長ややりがいにつなげていけるのです。

思いやりのある発想や気がきく行動の秘訣は、感情のコントロールから始めることです。感情をコントロールして、前向きな思考になる方法を教えることで、気がきく人材を育てていくことができると考えます。

■「感情をコントロールする」ことは難しい?

ビジネスパーソンとして、職場の人間関係を良好に保ちつつ、仕事を上手に進めていくためには、感情をコントロールすることは不可欠です。しかし、不機嫌な感情を表情や態度から出す非言語のコミュニケーションは、ほとんどの場合、本人は全く気づいていません。気がきく人は、自分の感情をいつも「快」の状態に保ち、「不快」な感情は引きずらないようにコントロールしています。 特に「個人の不快な感情」は「組織の不快な感情」として職場に波及し、暗く沈滞した組織風土をつくります。

感情コントロールができていない人が、コントロールできるようになるには、どのようにすればいいのでしょうか。

■感情のコントロールは、誰にでもできるようになる

スポーツドクターの辻秀一氏は「フロー理論<」のなかで、以下のことをおっしゃっています。フローとは、「ゆらがず、とらわれず」、状況に即した最適、最大、最高のパフォーマンスが出ているときの心の状態のことです。このとき、集中力が高まることで、パフォーマンスが向上し、望む結果が得やすくなります。

心の状態をフローにする脳の力を「ライフスキル」といいます。結果を出している人は、つねにこのスキルを磨くトレーニングをしています。ライフスキルの根幹として大切なのが、「感謝すること」「応援すること」「人を思いやること」です。心の状態は、「言葉、態度、表情を選ぶ」ことでフローに変わるといわれています。

心の状態には、「言葉」「態度」「表情」「思考」が大きく影響を及ぼします。したがって、「前向きな言葉」「穏やかな態度」「よい表情」「よい思考」を自らが選択することで、感情コントロールができるのです。このようなコントロールのやり方があることを、上司や先輩の方々は、新入社員や若手社員との日頃の会話のなかで教えてあげてください。

言葉がよい影響を与えるためには、日頃の「口ぐせ」を振り返ってみることです。否定的な言葉より肯定的で明るい言葉を使うようにしたいものです。表情がよい影響を与えるためには、「笑顔」でいることです。態度は、「平常心」で心を穏やかに整えることです。そして、思考がよい影響を与えるためには、「前向き」「積極的」な姿勢を心がけることが大切です。

「自分の心は自分で決める」「自分の機嫌は自分で管理する」という意志は、フローの状態を保つためにも、とても大切だといえます。ライフスキルは「スキル」なので、トレーニング次第で習得可能です。明るい職場づくりにもつながりますので、ぜひ職場全体で取り組まれることをお勧めいたします。


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