新入社員や若手社員を「気がきく社員」に育てるためのエッセンス

9.新人・若手に教えたい気がきくビジネスメールの作法


21世紀に入り、ビジネスにおけるコミュニケーションの手段は、電話、FAX、手紙からメールやスマホへと急速に移行しました。メールは手軽で効率的なコミュニケーションツールですが、万能ではありません。メールに依存しすぎずに、複数のコミュニケーションツールを上手に使い分けることを新人や若手社員には教えておきたいものです。

メールによるミスや配慮不足を防ぐとともに、気配りのある信頼されるメール作法をきちんと指導できているかどうか確認しましょう。

■メールで人間関係が悪化したり、会社の信用を失うことも…

メールは手軽なあまりちょっと気を抜いた瞬間に、ミスや失敗を起こしがちです。また、メールの特性や作法を知らないことから、相手に不快な思いをさせて会社の信用を落とす、人間関係を悪化させることも実際に起こっています。メールによる不備や失礼は、個人の問題ではなく、組織や会社の信用や信頼に関わり、会社の評価にもつながることを新入社員や若手社員には十分認識させておきたいものです。

特にメール作法については、若手の指導に当たる上司や先輩社員もきちんと学んだことがない方が多いのが現状です。

■宛先の使い分けを間違えると、個人情報や企業秘密の漏えいにつながる

宛先(TO)、CC、BCCは、それぞれ機能が違うため、正しく使い分けることが必要です。使い方を誤れば失礼に当たったり、個人情報流出という事態にもなりかねませんので、正しく使うように指導してください。

①TO・・・複数のアドレスを入れる場合は、その順番に気を配ります。役職の上の方、目上の方から先に入れるようにします。TOで受信した人は返信義務があります。

②CC・・・送信する場合、相手がCCを見落とさないように、メール本文の宛名の下にCCで送る人の名前を入れます。CCで受信した人は、返信義務はありません。CC送信時に気をつけたいことは、上司のCCについての扱いです。上司によっては、CCメールは読まないこともあるため、読んでほしいメールはTOに入れる、一声かけるなどの気配りが求められます。

③BCC・・・BCCで送信するメールをCCで送信すると、関係のない人に個人情報(メールアドレス)が流出するため、十分な注意が必要です。そこで面識があればCCで、面識がなければBCCで送信することを基本とします。

■受信者に分かりやすい件名をつけないと読まれないことも…

メールの件名は第一本文と心得ます。本文全体の要約となるようにつけることが大切です。件名でメールを開いてもらい、本文を見なくても件名で概ね内容が把握できることが理想です。

「ありがとうございます※①」「〇〇セミナーについて」など、本文を読まないと内容がわからない件名はよくありません。読む相手の立場に立って、「目的、用件、いつ※②」がわかるように書くことが基本です。相手の時間を奪うことなく、具体的でひと目でわかる件名を工夫します。メールの目的はカッコ書き【 】をつけると一目瞭然です。文字数は15~20文字程度でまとめます。

※① ✕「ありがとうございます」⇒〇【お礼】本日の打ち合わせ:京都株式会社 山田
※② ✕「スケジュール変更の件」⇒〇【連絡】〇〇社様訪問日8/10に変更

■定型文では心も思いもこもらないそっけない内容になってしまう

メール本文について、簡潔ではあるが何となく事務的でそっけないと感じたことはありませんか。ビジネスメール作成において、基本構成に則ることは大切ですが、定型文のみで終わると無機質で冷たい印象を与えてしまいます。

そっけない、きつく感じる、形式ばって心が感じられないメール表現は避けたいところです。相手との関係性をよりよくするために、挨拶と名乗りの後に、相手に合わせた気配りフレーズを添えて用件に入ることを教えましょう。

「昨日はお忙しいなか、お時間をお取りいただきましてありがとうございました。お陰様でご要望がよりイメージできました」「残暑厳しい毎日が続いておりますが、お変わりございませんか」等を添えるだけで心が感じられてメールの印象は大きく変わるものです。

今後はSNSがビジネスに活用されて、チャットで会話するようにもなるでしょう。また、初めてメールを送る相手なら、定型文の挨拶から始まり丁寧に文章を書かなければいけませんが、何度もやり取りしている相手なら、短い一言の挨拶からすぐに本文を書くケースもあると思います。

■用件はさっと読んでわからないと、読み手はイライラする

用件は簡潔で、相手が読みやすく、理解しやすい内容であることを心がけましょう。そのためには、一文を短くする、改行をする、箇条書きを活用する、結論を先に書く等、気をつけなければなりません。

まず、一文は短くします。一文が長くなるのは、接続助詞(~が、~で)を多用することが原因です。したがって、読点より句点で文章をまとめて、必要に応じて接続詞で繋げます。そして、どんなに長くても、一文が50字を超えないようにします。

✕ 「昨日○○社を訪問し、先方のご要望をお伺いしたうえで、後日提案書を作成し、プレゼンをする運びになりましたが、最終決定は役員がなさるとのことで、採用されても実施時期は○月以降になるそうです」

○ 「昨日○○社を訪問し、先方のご要望をお伺いしました。これらをもとに後日提案書を作成し、プレゼンをする運びになりました。ただし、最終決定は役員がなさるとのことです。よって、採用されても実施時期は○月以降になるそうです」

次に、読みやすくするために一行の文字数は20~30字程度にします。文章は3~5行程度を一段落とし、段落間は1行空けて読みやすくします。

最後に、簡潔な文章を書くときに適しているのが箇条書きです。箇条書きにすることで、伝えたいことが明確になります。また、情報が一つひとつ区切られるので、読みやすく、必要情報が取り出しやすくなります。ダラダラと続く文章は、箇条書きでまとめることを教えてください。

■メールの返信はどこで終わればいいのか、困ったことはありませんか?

自分から送信した場合は、送信⇒相手から返信⇒自分から再度送信で終了します。特にお客様や上司など目上の方に対しては、自分が送信したメールで終了するようにします。上司に対しては「ありがとうございます」「よろしくお願いいたします」等、一言でもいいので返信します。

お客様に返信する際の気配りとして、最後に一言、「こちらのメールへの返信のお気遣いはなさいませんように」等を添えることも指導しておきましょう。

ビジネスメールの作法はこれ以外にもまだまだたくさんあります。ぜひ、これを機会に新入社員や若手の方々にメール指導をしていただき、会社のイメージアップを図っていただきたいと思います。


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